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「伏せろ!」
呆気に取られている六車を相澤は覆いかぶさるように押し倒した。二人が倒れたアスファルトの上は塀で金光から死角になっている。
金光が持っていたのは3Dプリンター製の拳銃だろう。3Dプリンターの発展により、データさえあれば一般市民でも銃を入手できてしまう。
「相澤さん、血が……!」
相澤の下で六車が相澤の肩を指す。
銃弾で肩の服が裂け、少し肉が抉れていた。
「大丈夫だ。ちょっとかすっただけだ。お前は大丈夫か?」
「はい、俺はなんとも」
相澤は数年前に自らの隣で凶弾の犠牲になった後輩の刑事を思い出した。今回は守ることができたと相澤は安堵したが、そんな感傷に浸っている場合ではないと思い直して、射線に入らないように壁を背にしてしゃがむ。六車もそれを見て、相澤と同じようにした。
「なぜ、宇宙崩壊装置のことがわかった!?」
突然、金光は真剣な口調で素っ頓狂なことを叫んだ。
宇宙崩壊装置という聞き慣れない単語に、相澤は六車を見るが、六車も知らないというように首を横に振る。
相澤は塀の向こうにいる金光に問いかける。
「金光さん、宇宙崩壊装置とは何ですか? 我々は違法駐車の反則金の徴収のお願いに来ただけですよ!」
「な、何!? 反則金の徴収だと……っ!」
金光はうろたえたような口調だ。
「金光さん。銃を置いて投降してください。宇宙崩壊装置というのは一体?」
「クソッ、無駄なことをしたか。まあ、いい。あと10分もすればこの宇宙は吹き飛ぶのだからな」
金光は返事と言うよりは独り言のようなことを言って、ドアを閉じた。続いて、鍵を閉める音が聞こえる。
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