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宇宙の終わり
ひとまず窮地は脱したと見え、相澤は六車に尋ねる。
「六車、宇宙崩壊装置についてどう思う? 本当に宇宙を崩壊させられると思うか?」
六車は首をひねった。
「普通に考えたら無理だと思うんすけど……うーん。ただ、光速度エンジンが不評とはいえ、金光博士は天才なのは間違いありません。もしかしたら本当に宇宙を崩壊させる装置を作ってしまったのかもしれません」
「金光はあと10分もすれば、この宇宙は吹き飛ぶと言っていたな。発砲してきたぐらいだし、奴は本気だろう。十分以内に宇宙崩壊装置を止められるのは俺たちしかいない。金光邸に突入して、装置を止めよう」
「やりましょう」
六車もいつになく真剣な表情だ。
相澤は念の為に無線で応援を呼んでから、腰の拳銃を抜いて、六車を見る。
「庭から回るぞ」
「はい!」
門から金光邸の敷地に入り、広い庭を走る。六車は相澤の後ろからついてきている。
大きな窓を覗くと、中は応接間と思わしき部屋で、人の姿はない。相澤は拳銃で窓を割り、腕を突っ込んで、鍵を外した。土足のまま室内に踏み込み、二人は家の中を捜索する。
金光邸は自宅と研究所が合体したような造りになっていて、トイレの横の部屋が広い作業場となっていた。
作業場には様々な機械があり、相澤は拳銃を構えながら、困惑した。相澤には何がどういう機械なのか検討もつかないのだ。
「この中に宇宙崩壊装置とやらがあっても、どれがそうなのかわからんな」
「そうですね……あっ、これは小型の光速度エンジン、こっちには小型核融合炉がありますよ」
機械工学科卒の六車はある程度、機械の判別がつくようだ。
「この中に宇宙崩壊装置はありそうか?」
相澤の問いに、六車は首をかしげた。
「いや、宇宙崩壊装置がどういう機械なのかもわかりませんし、なんとも言えないですね……」
相澤はふと、奥の部屋から明かりが漏れていることに気がついた。拳銃を構えながら、ゆっくりと歩みをすすめる。
奥の小部屋に入ると、金光が静かにたたずんでいた。
相澤は金光に銃を向けて、警告する。
「動くな!」
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