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相澤はため息をついてから、金光に尋ねる。
「どうして、宇宙を崩壊させようなんて思ったんですか」
金光は自嘲的に笑って答えた。
「人生をかけて研究してきた光速度エンジンが利用価値なしとの評価を受けたからだ。これに全ての人生を費やしてきたのに、利用価値なしとは! 私の人生とはなんだったのか!」
金光は昂ぶり、拳を壁に叩きつけた。大きく息を吐いて、金光は続ける。
「私は全てが嫌になり、生活は荒れた。違法駐車も繰り返した。そして、私は宇宙を巻き込んだ自殺をすることにしたんだ。私を認めなかった人間への復讐も兼ねてな」
金光が語り終えると、言いようのない静寂が辺りを支配した。
残り時間は五分。
最早、相澤にも六車にもできることは残されておらず、宇宙の終焉を待つのみとなった。
いや、本当にそうだろうか。
相澤は何か引っかかっていた。自分が宇宙崩壊装置のタイマーを止めることができるような何かを聞いたことがある気がしたのだ。
相澤は必死に思い出そうとする。
「タイマー……タイマーを止める……タイマーを壊せないなら……どうすればいい……? タイム――時間?」
相澤は六車がパトカーの中で得意げに言っていたことを思い出す。
『光速に近づけは近づくほど時間の流れ方がゼロに近づくんすよ』
相澤の脳内に光よりも速くひらめきが駆け抜けた。
「六車! 光速度エンジンだ! 宇宙崩壊装置を光速に限りなく近づけて、時間の流れを止めるんだ!」
「ああ! その手がありましたね!」
六車がなるほどというように手を打つ。
「クソ、させるか!」
金光が拳銃を抜いた。
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