第三章

17/24
前へ
/139ページ
次へ
 走り出す車の中で私たちの空気は重いものになると思った。 あの日から一切会っていないのだから。 「まだ気にしてる?」 「え?」  マヌケな声だった。 図星でちょうど思っていたことを言われた私の声。 その声に勇輝は笑った。 「面白いね。そんな声初めて聴いた」  笑っている勇輝を見ると今までの感情を忘れてしまうほど心が緩む。 「気にしてくれてるなら俺は嬉しいけど」  運転する勇輝の声が私の胸を大きく動かす。 気にしている。 だから言いたい。 後のことは今の私にはわからないのだから。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加