第三章

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 予定の七時に駅に着くと前に見た勇輝の車はなかった。 平日に教師が七時に待ち合わせするのはやはり無理があったのかもしれない。 きっと部活や生徒会、三年生は受験対策。 中学は遠い昔のようでも記憶は残っている。 大変で辛くてその中に楽しさが残る。 私の学生生活がいいもので終わってくれるのがどれだけいいか。 よくわかるのは嫌な過去になってしまう姿を見たことがあるから。 その記憶に触れたくなかった。 ずっと隠して忘れていた。 ただ、学生というものに恐怖あったから。 一つではない。 見たもの、実感したもの。 全てが敷き詰まる学生という時間は複雑だった。 今、教師をしていて思うのは大変さはそれぞれ違うこと。 だから自分を悲劇のヒロインのように思えなかった。 思うことではなかった。 「美紗子ちゃん!」  過去を振り返っていると見覚えのある車から勇輝が顔を覗かせる。 駆け寄って助手席に乗ると、勇輝が私の目を見て謝る。 「ごめん、遅れて」 「大丈夫だよ」  シートベルトをするときに勇輝の格好が目に留まる。 「勇輝君、今日学校で行事があったの?」 「ないよ」  勇輝はラフな格好をしていない。改まった服を着ていて自分に緊張が走る。 「さすがに学校で着てるジャージとかじゃ会えないよ」  確かに中学はジャージで過ごす先生が多かった。 そのままの格好は見せたくないのも何となくわかる気がした。
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