第三章

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 車の揺れが心地よさを増す。 昔は車でよく寝ていた。 大人になってからはさすがにできないが。 「こっちで合ってる?」 「うん。もう少しで着くよ」  向かう先は私のアパート。 でも部屋にいれるわけじゃない。 「駐車場平気なの?」 「前の彼氏が使っててバタバタしてたから解約してなくて。だから今は,まだ使えるよ」  昔の恋は振り切ったはずなのに一つも忘れない。 恭平がいたらどうなっていたのだろうか。 でも過去だと言い切れる。 一つの恋以外は…… 頭の中をめぐる記憶が途絶えたのはアパートに着いてからだった。 「どこ行くの?」 「公園に行こう」  予想外。 そんな表情をする勇輝。 その勇輝の手を引いて私は冬空の下を歩いた。
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