第三章

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 公園に着くと他の公園とは違う明るさが迎える。 体育館のような施設の光、マンションの光、街灯の光。 全ての光が安心する空間を作る。 あまり遊具がない公園で子供が少なくよく話をするだけの時には使っていた。 冬に来たことはなかったため、寒さに驚く。 少ない遊具の中にブランコを見つける。 昔は一番好きだった遊具。 昼間に乗ることができないからかそのブランコが魅力的だった。 「ブランコ乗らない?」  私が振り向くと同時に勇輝が私の首にマフラーを巻く。 「楽しそうだね」  初めてじゃない…… 前にも見た光景。 『お前、楽しそうだな』  そう聞こえた気がした。 昔の記憶。 マフラーを巻きながらその言葉とともに笑う。 どうして今思い出すの? 忘れていたはずの恋。 その恋の味が残っているのは初恋だから? もう近くにいない相手。初恋の人など思い出す暇はない。 「ブランコ乗ろうか。マフラー少しは温かい?」  目の前の風景が見えるようになった時、全てを忘れて勇輝の笑顔に惹かれた。 頷いて私たちはブランコに乗った。
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