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勇輝の愛情は私の気持ちより何倍も重くてしっかりしている。
対して私はいろんな感情に振り回されて何も答えられない。
自分の素を知ってまで好きでいてくれるなら覚悟を決めたい。
今なら考えられるから。
「私の素の顔を知っても恋人にしたい?」
「何回聞かれても答えは一緒だよ」
「じゃあして」
「え?」
勇輝の声は行動を止めたのがすぐにわかるほどだった。
ずっと見つめてこなかった私の言葉はすぐに理解にできないはず。
だからもう一度言う。
「恋人にして。本当の」
自分で言いながら直視できない。
私が下を向いていると目の前に靴が見えた。
「こっち向いて」
うつむいていた顔をあげた瞬間勇輝は私にキスをした。
突然なのに拒否できない。
自分が望んでいるみたいな気持ちだった。
顔を離すと勇輝は私の頬を押さえた。
「美紗子、って呼んでいい?」
勇輝の顔が好きだった。
まっすぐな視線を持つ顔が。
頷くと勇輝はブランコから私を立たせた。
「美紗子、キスして」
「え?」
「美紗子から」
試されている気持ちだった。
私が試した。
だから今度は勇輝の番。
勇輝の前に立つと鼓動が速くなる。
しっかり顔を見ることが緊張するなんて思わなかった。
私は勇輝に一歩近づいて背を伸ばした。
唇が近くなると焦(じ)らすように勇輝は背伸びをする。
戸惑う私に勇輝はわざとらしく笑う。
「もう!」
私は勇輝の腕を軽く叩いた。
笑わせてくれる勇輝が好きだ。
この時間が楽しい。
「もうしないよ」
「嘘だよ」
私の腕を引っ張って勇輝は私にもう一度キスをした。
照れる私を落ち着かせるように勇輝は包み込んでくれた。
これが日常になったらきっと最初だけでも輝いてくれる。
一瞬の幸せ。
この一瞬の出来事が幸せならば続いてほしい。
私の綺麗な恋の道を進みたい。
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