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煮込みうどんができる間、私はずっと恋愛について考えていた。
好かれることは悪いことじゃない。
好きになることも。
でもどうして傷つけることになるのだろう。
もし私が今までの恋愛を意識していたら勇輝はそばにいなかったかもしれない。
今までの恋愛は上手くいかなかった。
全てきっぱりと別れている。
別れがそれぞれどの感情になるのかわからない。
もう悔いはない。
そう思ったのに手を止めた。
一人の人物を思い浮かべたから。
いつも明るくて、笑わせてくれて。
ありのままの自分を受け入れてくれた。
理解が一番ある人だった。
「どうしたの?」
気が付くと勇輝が後ろから抱きしめていた。
後ろを見ると上を着ていないことに気づいて顔が火照る。
「ちょっと服着てよ」
「恋人なんだからこれくらい普通でしょ」
耳元で言われるとその場から離れたいほど自分の熱が上がる。
「風邪ひくよ」
包み込む腕。
熱が上がるのも火照るのも安心に繋がっていくとその腕をゆっくり掴んだ。
「照れてる?」
「当たり前じゃん」
「素直で可愛い」
勇輝は大きい手で私の頭を大げさに撫でる。
「からかわないでよ」
「わかった。服着てくる」
頬に一度キスをすると勇輝は風呂場へ姿を消した。
いつも勇輝のペースにのまれている。
でもそれでよかった。
私に似合う、安心できる恋だから。
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