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ケーキを食べながら私たちは今までの生活を話した。
「俺、生徒だったら美紗子のために学校行くかも」
「なんでよ」
「だって美人で行動可愛くて性格よくて教えるのが上手いって生徒だったらきっと思う」
自分の恋人のことなのに次々に出てくる褒め言葉。
「勇輝に勉強教えたことあったっけ?」
古い記憶から探し出しても学生の頃に勇輝と関わった記憶があまりなかった。
「授業の時の話し合いとか発表とかで抜群に頭良くていつもしっかり説明してたよ」
高校の記憶は遠いものだと思って生活していた。
その私とは違って勇輝は高校の記憶をしっかりと持っている。
勇輝の方が先生に向いている。
いつでも記憶に残していてその記憶を力に付けることができるのだから。
「しっかりした美紗子が教師になっててよかった。教師になってなかったらあんな偶然な再会してないし」
私も。と言いたくなった時、今日のことを思い出した。
あの告白。
きっと小澤は自分自身と闘って職場恋愛になるのを覚悟で言ってくれた。
同じように昔の恋心を明かしてくれる勇輝に黙っていることはしたくなかった。
本音を言える相手になってほしかったから。
「勇輝君」
食べ終わったケーキの皿をテーブルに置いて勇輝はこちらを見た。
「私、今日同期の先生に告白されたんだ。もちろん断ったし、隠すこともない。でもよくそれですれ違うことあるから、勇輝君とはそうなりたくなくて」
勇輝の目を見れない。
こちらを向いているのはわかる。
ただ黙っている空間が不安を誘う。
「美紗子」
名前を呼ばれてようやく勇輝の顔を見れた。
勇輝の顔は優しかった。
そっと私に近づいて抱きしめてくれる。
「ありがとう。話してくれて」
抱きしめてくれる勇輝の腕を握った。
温もりが心地よかった。
「でも、さっきみたいな可愛い顔、見せちゃダメだよ」
「え?」
「ケーキ見つめてる可愛い顔」
体を離してわざとらしく笑う顔を見せる。
「もう!」
勇輝に可愛いと言われるのはやはり嬉しい。
照れるのを隠しながら勇輝の胸に飛び込むと笑い声が部屋を包んだ。
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