第四章

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 新入生用の説明資料を作り終えて私は帰る支度をした。 「お疲れ様です。お先に失礼します」  鞄に荷物を入れる私より先に小澤が職員室を出ていく。 あれから小澤とは普通の会話をする。 ぎこちなさは残るが。 一度息を吐き鞄を持って私も職員室を出た。 腕時計は六時半を指している。 時計を見ていると息が詰まる。 まただ。 やっぱりいる。 見なくてもわかるのは足音。 最初から今までずっとこの足音が私の耳に響いてくる。 最初の日から一週間。 三月に入った今でも仕事の帰り道が怖い。 その証拠に手が震えていた。 駅に行くとなくなる気配。 足を止めることすらできなかった。
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