第四章

11/30
前へ
/139ページ
次へ
 目の前に湯気の立つ紅茶が置かれた。 「落ち着いた?」  ソファに座る私の横に来た勇輝は優しく頭をなでる。 小さく頷くと心の中で自分がコントロールできるようになったのがわかる。 うつむく顔をあげるのは力のいることだった。 そんな私を見て勇輝は私を抱きしめてくれた。 何も言わずに。 腕の中は温かかった。 温かさが固まったままの唇を動かした。 「怖かった」  私が一言呟くと勇輝は顔を見るために私から体を離す。 「何があったの?」  心を開放するのは今だった。 勇輝の顔を見て思う。 頼りたい。この人を。 「あのね」
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加