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学校に入り職員室のある階に着くといつもの朝より騒がしかった。
「おはようございます」
職員室に入ると真っ先にキャンパス長と目が合った。
「月野先生、無事?」
駆け寄ってきたキャンパス長と女性の先生を見て日常が止まるのを知った。
「無事って、何のことですか?」
無理やりに出す声は途切れそうになるほどかすむ。
「これ。朝学校に」
差し出された紙は私の心臓を止めるかのように突き刺さるものだった。
『月野美紗子をやめさせろ』
命に関しての脅迫ではないものの私にとっては恐怖でしかなかった。
私の名前と職場を知っている。
私が知っている人物なのか。
もっと違う私に関係のない人物なのか。
どちらにしても日常が壊れたことに変わりがなかった。
「とりあえず今日来る先生たちだけで会議しましょう。三月で卒業式も終わって生徒がいなかったからよかったけど、月野先生に何かあったら怖いし」
紙を持つ手が震える。
その手を温かい手が包んだ。
「大丈夫。月野先生は悪くない」
キャンパス長の手だった。
今にも泣きそうな私の手をずっと握ってくれていた。
悩みを持った子が来るこの学校だからこその優しい雰囲気。
そんな場所に危険を持ち込んでしまった私には絶望という言葉が一番適していた。
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