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明るいうちに家に帰された私は一人、部屋のソファに座り込んでいた。
膝を抱えて明るい部屋にいるのは孤独を感じる。
恋愛感情が人を狂わせてしまう。
いい人だったのにいつしか偽りのような姿になってしまう。
恋愛は輝かしいものに見えて残酷だ。
青春と言える頃が一番恋愛としていいのかもしれない。
思うままに動いていつでも別の道に進める。
でもそれは偏見できっと青春の中にも酷なことはあるのだろう。
私が体験した青春も最終的に儚く散った。
それでも憎めないのはなぜだろう。
青春という言葉のせいなのか。
それとも美化したいだけの思い出なのか。
答えはわからない。きっとこれからも。
「たい……」
一人の名前を呟きかけた時、電話が鳴った。
思い出に浸り過ぎた私は首を振って携帯を見た。
勇輝からの電話でなぜか焦った私は急いで耳に当てた。
「もしもし」
「あ、美紗子。家に行っていい?」
「仕事は?」
「あ、終わったら。美紗子の声聞きたいから重要なところ忘れてた」
「何それ」
思わず笑う私は気づいた。
もしかしたらこれも勇輝なりの愛情表現なのかもしれない。
「じゃあ待ってる」
電話を切った後、笑っていたいはずなのに罪悪感が生まれた。
勇輝がいながら過去の恋愛を振り返ってもいいものか。
でも考えれば悪いことは一つもない。思い出としてとっておけるならそのままで、経験と考えれば活かせばいい。
今私が考えるべきことは安全だけ。
私と生徒と職場の安全を。
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