第四章

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 時計は午後の八時を指している。 まだ勇輝は来ていない。電話も来ていない。 三月だから仕方がない。 中学校や全日制の学校などは今は忙しい時期。 わかっているのに居ても立っても居られない私は勇輝に電話をかけた。 繋がってほしい。その他に今は望まなかった。 何度もなる呼び出し音。 その呼び出し音は途中で鳴るのをやめた。 携帯を持っていた手は力が抜けて膝の上へと落ちていった。 願うのは勇輝の無事だった。 もう失いたくなかった。私の平凡で日常的な生活を。
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