第四章

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 目に溜まった涙を全て出し切ったような感覚の私は勇輝が作った夕飯を食べた。 勇輝は感想を待っているかのように私を見つめていた。 「上手くできてるでしょ?」 「うん。私より上手いかもしれない」 「それはないよ」  そう言いながら食べ始める勇輝はいつも通りの笑顔を見せている。 「あ、今日ごめんね。仕事終わらなくってさ焦ってたから携帯見るのも忘れてて」  納得できた私はやっと地に足がついたようだった。 「それより、怖かったってまた何かあった?」 「……」  上手く言葉にできない私は不器用だ。 素直で上手く答えられたら一人の力で起き上がれるのかもしれない。 一人で起き上がることさえできない私を捨てないでいてくれる勇輝が心の支えだった。 「学校に紙があったの」 「なんの?」 「私をやめさせろって」 「え、何それ」  食べる手を止めて真剣な顔つきになる勇輝を見て言葉が詰まる。 一度止めようとした自分を抑えて勇輝に説明を続ける。 「心当たりはやっぱり告白してきた同期で今日出勤してなかったの。鋭い脅迫じゃなかったからこのまま働くってこともできたけど、安全を考慮して私から休職の案を出した。その結果、新学期が始まる頃まで休職することになったの」  嘘であってほしかった。あの学校からそんな人が出るのも嫌で、でも他の誰かでも怖くて。心の中はいろんな色が混ざって黒くなったようだった。 「美紗子」  真剣な顔つきの勇輝が私を見つめる。まるで何かを覚悟したように。 「俺の家で暮らさない?」 「え?」 「これから自宅待機とはいえ一人で家にいるのは変わらないし、美紗子の家を知ってるやつだったら余計に危ない。日中は俺いないけど、俺の家ならすぐに見つからないだろうし、俺的にもそっちの方が安心」  箸を置いて勇輝は私の目をもう一度じっくり見る。 「俺と暮らそう?」  いつでも優しくて誰よりも心配してくれる。 私は勇輝に何もしてあげられていない。 そんな私がまた勇輝を頼ってしまっていいのか。 思考がまとまらない中で一つ気づいた。 勇輝の行動に助けられるなら自分も少しずつ返せばいいと。 「本当にいいの?」 「うん。だって恋人でしょ?」  そう言って勇輝は手を出す。 私も手を出すと勇輝は力強く握った。 「俺が守るから」  私にとっての救いの手。頼れるのはこの手だった。
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