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クローゼットから大きめの鞄を取り出すと慣れない匂いが鼻に触る。
しわを伸ばして洋服を詰めた。
ふと窓を見れば天気のいい綺麗な空がある。
空の光と私の現状はコインの表と裏。
見えない裏は暗くて表に押し潰されそうになる。
今の私も空に押し潰されそうな目をしているのだろう。
「どうしてこうなっちゃったのかな……」
呟いた途端、携帯が着信を知らせる。
出たのはいつも通りの声の勇輝だった。
「夜の八時頃迎えに行くから準備しておいて」
それだけの会話なのに落ち着くのはきっとコインを裏返そうとしている勇輝という名の光が見えたから。
「よし」
気合を入れるかのように吐き出した声とともに作業を進めた。
新しい日常を迎える。そう思えばいいと心に言い聞かせた。
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