時の囚われ

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 しばらくして、長針と短針が重なる頃、閉ざされていた扉が開き、主人が屈託のない笑顔で私の前に現れた。  私はいつものように扉から飛び出して時を伝えた。  主人は「ハトさん元気になった!」とはしゃいでいた。その後「ごめんねハトさん、おうちドンってしちゃって、これからは気をつけるね!」と言って私の頭を撫でた。   今まで主人に声をかけられたことなどなかった私は、初めてのことに戸惑いながらもいつも通りの仕事をこなした。  私の中の喪失感はなくなり、心は今までにないほど満たされていた。
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