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「今から各病室巡回です
一緒にお願いします」
ー小児科かぁ
俺、子ども苦手なんだよなぁー
「小児科病棟?
なんか、えらくミスマッチだな」
「内科医で実習させた方が
よかったか?」
「俺はごめんこうむるね!」
「外科だとやりにくいだろう…」そんな話しをする二人
「小児科は全ての科を担当してる
ようなものですから」
「全て…」
「実習には一番勉強になります」
小児科病棟に入院しているのは
現在8人です
「これが8人のカルテです」
アンジーに手渡した
昼過ぎ
「クレーマー先生
休憩時間です」
看護師が彼の前に立つ
「えっ?あっ!俺?」
「そうですよ。クレーマー先生」
「なんか慣れないんだよなぁ~」
病棟の外に出ようと廊下を歩いているとき「危ない」誰かの叫び声
ガシャーン、何かとぶつかった
「イッテエ~!」
思わずしゃがみこむアンジー
「大丈夫ですか?」
ナースステーションにいた看護師が声をかけてきた
「俺は大丈夫だけど…」
ぶつけられた足を擦りながら
ぶつかった相手を見た
車椅子に座った10才位の男の子
「なんだよ!そっちが勝手に
ぶつかってきたんだからね」
まるで自分は悪くないかのような
言い方だ
立ち上がり彼の側に行こうとしたとき「コラッ!」男の子の頭を軽く叩く白衣の男性、アンジーより
幾つか年上に見える
「またリハビリさぼるのか」
そっぽを向く少年
「どうせ歩けないんだから!」
ーあの子は確か…ー
さっき見たカルテの病状
ー交通事故で足を手術して
今はリハビリの最中だったけー
「悪かったな」
アンジーに言葉をかける
白衣の胸の名札を見る
「実習生かぁ
でもクレーマーって…」
思わずムッとしたアンジー
「あぁ、なるほどね…」
じっと顔を見てボソッと言う
「何が言いたいんだ?」
「あっ、いや君は母親似か?」
「えっ…?」
「クレーマー先生と似てない」
「だから…?」
「そうだな!
なんの関係もないか」
あっけらかんと言った
そんな話しをしている間に
いつの間にかいなくなった少年
「あいつ~」
思わず声をあげた
「彼の足はどれぐらい
悪いんですか?」
真剣な顔で訊ねる
「イヤッ、もう大丈夫なんだけど
リハビリを嫌がってるんだよ」
少年の病室の方を見る
「俺に任せてくれない?」
おもわぬ言葉にアンジーを見た
アンジーはといえば早々と少年の病室へと歩き出していた
「ちょっと、君
何するつもりなんだ」
慌ててアンジーを追いかけた
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