16.初勤務と誕生日

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「ええと、あのね。じゃあ、もしよかったら、もしよかったらなんだけれど」 「うん」 「もし今週末あいてたら、お出かけしたい」 要さんがそっと笑った。ひどく甘い微笑みだった。 「うん、あいてる。土曜日で大丈夫?」 「大丈夫」 「どこ行きたいか考えておいてね。それとも俺が考えようか?」 「私が考えてみる。思いつかなかったら一緒に考えてくれる?」 「もちろん」 今までは、行事にかこつけてできることと言ったら差し入れくらいだった。 せっかく関係が変わったんだもの、お花見を一緒にしてみたい。 一日だと疲れてしまうと思うけれど、多分お昼ご飯くらいなら大丈夫。 お花見ができるカフェを探してそちらをお願いした。 そうだ。週末のお出かけには、久しぶりにお気に入りのイヤリングをして行こうかな。 ピンクゴールドのハート形に伴って、お座敷で触れられたときの熱を思い出した。 あれから少ししか経っていないのに、随分前のことのような気がする。 一人称が変わって、呼び名が変わって、口調が変わった。距離が近づいた。 長い長い恋を、諦めずに抱えていられることになった。 最近、まるで夢みたいに幸せな日々が続いている。 もし誰かからこの一年こそがお祝いだって言われたとしても、すんなり納得しちゃうくらい。 これからもたくさん一緒にお出かけできるといいなあと思った。
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