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まあ、殺されはしないだろう。
身包み剥がれて、身代金を取られるくらいで済む。
抵抗すれば命の保証はねえが、おとなしくしてりゃ命まではとられねえ。
死体の処理だって、面倒だからな。
それがここらの流儀だ。
金が全て。
ただし、命の代価がいくらになるかは運次第。
「――姫様」
ふいに、別の女の声が割って入る。
女というか、子供?
肩越しに振り返って見る。
すると女のドレスの陰にメイド服姿の子供が見えた。
ドチビすぎて、視界に入らなかったんだな。
……それにしても、気配が感じられなかったが。
「おい、金出しな!」
おっと、流石に路地裏の陳腐な追い剥ぎは、台詞までありきたりだ。
まあ、いい勉強になるだろ。
自分の身を守るには、どうすりゃいいのかってことのな。
そう考えて、やはり身を返そうとした時だった。
響いた、銃声。
ガン!と重い音。
いきなり撃ったのかよ、と咄嗟に後ろを見る。
「な……」
魔道硝煙の臭い。
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