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まるで銃撃が起こしたような風が、砂塵を巻き上げる。
黄色い砂がおさまった後、俺が見たのは手足を撃ち抜かれ、無様に地面に転がった追い剥ぎどもの姿だった。
見れば、ドチビのメイドが腰に吊るしたホルスターから、一度収めた銃を引き抜くところだ。
メイドは無造作に、倒れている一人の許へ歩み寄る。
銃口を男の額に向けると、こう言った。
「――姫様。とどめの御許可を」
俺は思わず、口笛を吹いた。
おいおい、なんつう腕だよ。
倒れた男は五人。
銃声なんて、一発分しか聞こえなかったぞ。
しかも、狙いは正確無比。
一瞬で五人の手足ばかりを撃ち抜いて、行動不能にしちまいやがっただと。
俺ぁ、んな早撃ちのできる性能の銃なんざ、見たこともねえ。
どんな代物だ。どんだけ金かけりゃ、そんな性能の銃が作れる。
こんな腕前のガンナーも見たことがねえ。
しかも、それがこんなドチビのメイドだと?
――なんて日だ。
しけた路地裏で、こんなクソ面白そうなもんに出くわすとはね。
「……駄目よ。リィ。
もう勝負はついています。
これ以上、貴女の手を穢すことは、わたくしが許しません」
凛と響いた声に、思わず女を見た。
これだけの修羅場を見た後だってのに、女は息ひとつ乱しちゃいなかった。
世間知らずな貴族の御嬢様かと思ったのに。
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