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ホルスターにおさめて女達を見遣ると、ドチビメイドが俺を睨みつけてきた。
おお怖い。思って口許だけ歪めて笑う。
女は僅かに驚いて口を噤んだ。
けれど、すぐに唇が笑む。
白い手袋に覆われた指先が、顔を隠したヴェールを少しだけ持ち上げた。
見えたのは、濃い青色の双眸。
群青――つうんだったか。
こんな濃い色合いの蒼は、見たことがない。
珍しい色のその目が、和むように青色をやわらげる。
不覚にも、俺は女の顔に見入った。
「……それも。御用意いたしましょう」
人形みたいに整った白い顔は、笑うと花が咲いたみたいだった。
俺はこんな綺麗な顔した女を、生まれて此の方、他に見たことがねえ。
なんだってわざわざ、ヴェールなんかで隠してんのかね。
「で。どちらに行きたいんですかね。お姫様」
訊くと女は、また少し小首を傾げるようにしてから答えた。
「ホテル……コールドウェルに行きたいのですが。お分かりになりますか?」
「は?」
お分かりになりますかも何も。
俺は呆れながら、背後を指差してやった。
「あそこに見えてるだろ」
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