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地べたに這い蹲るようにして低い建物がひしめく、この裏路地。
そんな場所からでも、遠く霞むように見える、高層の建物。
見下ろされてる感じが満載の白亜の建築。
この街で最高級の呼び声も高い、ホテルコールドウェル。
あんなところに御宿泊か。
この街育ちで、それなりに色んなところへ顔が効く俺だって、あんな高級ホテルには一度も足を踏み入れたことがないってのに。
さすが姫様なんて呼ばれるだけのことはあるな。
「つうか、なんでこんな寂れた方に来ちまったんだよ。
あきらかに、方向間違ってんだろ」
「えっ……」
「えっ……」
戸惑ったような声が、ふたつ返ってくる。
あ、わかった。
こいつら、二人とも方向音痴だ。
「……しゃあねえなァ。連れて行ってやるから、ちゃんとついて来な」
「ありがとう御座います」
さっきまでの落ち着きぶりはどこへやら。
うろうろと目を泳がせていた主従は、そう言ってやると安心したようだ。
俺に案内させて安心してるなんて、そこはやっぱり世間知らずだな。
とはいえ、このドチビメイドが護衛なら、そこらのチンピラじゃ歯が立たないだろう。
――なんて日だ。
なんだかクソ面白い拾い物をしちまった。
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