泥団子

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「では、夏休みの自由研究に向けてのの商品プレゼンを続けさせて頂きます」 テーブルの上にはこねあげた泥団子が幾つか乗っている。一つは先程まで製作の過程を丁寧に説明しながら自分で即席に作り上げたものだ。 「子供には難しくないかね」 「変化がゆっくり過ぎては、自由研究の題材として人気が出ないぞ」 「ピカピカの泥団子も、その表面に色んなオプションを付ける事で見栄えすると考えるなら、別商品で似たものがすでにあるアイデアだ」 「だよね。あれは良いアイデアだったね」 わが社のかつての栄光だ。零細起業ながら息の長いヒット商品にはなったが、どちらも爆発的な人気は得ていない。 育てるなら朝顔やヒマワリの方がまだ金も掛からないと、親が財布の紐を緩める程の魅力もないのだとされた商品。 今回はそこの所も打破したいと考え抜いている。 育てるだけではない、途中で破壊させるのだ。慎重な、それこそこの小さな泥団子を壊さないだけの衝撃を育成途中に与え、より複雑に力強く変化する様子を観察させる事が目的の一つでもある。箱庭や半球よりも多彩に変化するとデータは出そろっているのだから。 それにこれが商品化したなら、箱庭も半球も含めた戦略を僕達は用意している。
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