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「逆って?」  先程から聴けば答えてくれる加藤に甘え切ってしまっていた俺は、自分で思考することもなく問い返す。 「あなたが見えてないわけじゃなく、そもそも今の私がそういう存在ってことです。」  俺が首を傾げる素振りを見せると加藤は続けた。 「私に形がないってことです。なんか魂だけになってから"違和感"みたいなのずっと感じてるんですよね。いまいち自分の形を掴めないっていうか。まあ魂だけになったんだから、形なんかなくたって不思議じゃないですし。逆に人型を保ってる榊さんが珍しいのかもしれませんよ。」 「成る程」と思考がまとまりきるよりも先に相槌を打つ。加藤は話すのが楽しくなってきたのか彼自身の考察を話してくれた。 「思うに榊さん、あなたはまだ死を受け入れてないんじゃないんですか?生前の意識そのままでいるせいで魂もそれに引っ張られて人の形を保っている。先程の話だとあなたは、世界の滅亡を知らなかった。あなたは世界最後の時なにをしていました?もしかしたらそれが原因かも。」  世界最後の時になにをしていたか。答えは二度寝だ。いつも通り朝の気怠さに負け、意識は夢の世界へと飛んでいた。 「ね、寝てました。」  世界最後の時にしていたことが二度寝だったというこを明かすのが少し恥ずかしく、自然と弱々しい声になりながらもそう答えた。 「じゃあ多分それが原因だと思います。あなたは世界最後の時を感覚的には経験していない。魂だけになりながらも普段と同じように目を覚ましたせいで形を捨て切れなかったのでしょう。」  指摘をされて納得はできた。確かに俺は普段どおり目を覚ました。死を自覚したのもそのタイミングだ。  しかしどうだろう。世界が滅亡するタイミングがわかっていたところで、実際に死んでみなければ死を自覚することなどできないのではないか?だが目の前の加藤は現に形の無い形を取っている。一体なにが違ったのだろう?    
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