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「加藤さんは最後の時はどう過ごしてたんです。」
自分との相違を確かめるために問いかけた。
「私ですか?私は家にあった一番いい肉を食べました。最後の晩餐ってやつです。まあ5分しかなかったんでレア焼きで食べましたけど。レアには苦手意識があったんですけど、あれはおいしかったですね。」
「思いの外大したことをしていないじゃないか。」
心の中で言ったつもりが声になってしまっていた。
「まあ5分しかなかったですからね。独り身ですし、誰かに会いに行こうにも為したかったことを為すにも時間がなさすぎです。できるのはせいぜい小さな贅沢くらいしかなかったんですよ
それに少なからず未練があったからこうしてここに留まってあなたと話せているんです。」
失礼なことを言ってしまったという自覚はあったが加藤は変わらない声色で話してくれた。
そのことにそっと胸を撫で下ろす。
「いやすまない、悪気があったわけでは無いんだ。」
謝罪の言葉を述べると「気にしないでください、大丈夫です。」と加藤は答えた。
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