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未海も咲良と同じく、忘れようとしていたあの日の光景を思い出していた。
「父親にやられたんですか?」
未海の言葉に驚いた表情をする和美。
言わずともそれが答えだった。
「あんたら、何か知ってるの?」
腕を組み、険しい表情でみのさんが言った。
「たまたまだったんですけど」
未海はそう切り出し、自分達が目撃したことを話した。
「変なとこ見られちゃったね」
和美はそう言って苦笑いし、隣に立つみのさんに目配せをする。
そこまで見られていたのなら隠す必要も無いだろう、という表情。
みのさんは険しい顔をしたまま咲良と未海を見ていたが、はあ、と溜め息を付き、仕方ないね、と言った。
「この子は、父親に暴力を振るわれてるの。いわゆる、DVってやつ」
みのさんはそう言って、耳に付けた三日月のピアスをこすり取るみたいに指で触った。
そうすることで、自分を落ち着かせようとしているようだった。
和美が、みのさんの後を引き継ぐ。
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