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ライトを遮る金の舞い、リングの周りに集まった観客がばら撒いている、ひらひら、ひらひら、と。
「9分34秒、ウィナー狩野咲良」
試合終了時間と勝者を告げるアナウンスが流れると、会場は更に盛り上がった。
咲良は四方にいる観客を見渡した。
拳を振りかざす者、人差し指を突き立てる者、さくらと書かれたボードを掲げる者、誰もが自分を見ていた。
誰もが自分に熱狂していた。
いつの間にか、リングにマイクが投げ込まれている。
オーナーが投げ込んだものだ。
さくらはマイクを手に取り、いまだ大の字で倒れる未海を挑発する。
「おいおい、お前こんなに弱かったか? がっかりだよ。圧勝だね。見てよ、この私。ぜんぜん疲れてないし、どこも痛くない」
本当はこうやって喋るのもきついし、倒れそうなほど身体が痛んでいる。
「まあ、次やる時までにしっかり練習して、もっと楽しませてくれよな」
そう言って、マイクをリングに叩き付けた。
いいぞーさくらー、と誰かが言うと、再びさくらコールが起こる。
さくら、さくら、さくら、さくら、さくら。
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