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「あの人が暴力を振るうようになったのは、半年くらい前から。実は母さんはあの人とまだ籍を入れていないんだ。みんなには父親って説明はしてたけど、ぶっちゃけ赤の他人。母さんと出会って家に来るようになって、私はほとんど父親のように接していたし、実際そのうちそうなるだろうと思っていた」
そこでみのさんが、無理しなくていいよ、と言葉を掛ける。
和美は、大丈夫、と言って続ける。
「最初の頃は優しかったんだ。そのうち気に入らないことがあったり、嫌なことがあったりすると、私を殴ったり蹴ったりするようになった。母さんが止めると、今度は母さんにも暴力を振るった。いつも殴るのは顔じゃない。他人からは見えない身体を殴る」
全身を覆うボディースーツは、殴られた痣を隠すためのものだったのかと咲良は気が付いた。
注意深く姉さんのことを見ていれば、もっと早くに気付いてやれたのではないか、と咲良は自分を情けなく思った。
「そんな奴、母親に言ってさっさと別れればいいじゃないですか」
未海がそう言った。
しかし和美は、それは出来ない、と首を横に振った。
「どうして?」
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