ひと夏の思い出

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 そこは、両親の仕事の関係で、俺が小学4年生の夏休みの期間だけ過ごした場所だった。  「懐かしい…まるで時間が止まってたみたいに、何も変わらないなぁ」  定期をかざして駅の改札を出ようとすると、ブザーが鳴る。  「お客さん、乗り越し精算してくださいよ!」  はっ!と我に返った。俺は何をしているんだ?  今からなら、引き返して会社へ行けば、上司たちに謝り倒して何とかなるかもしれない。  ーーコウジ!  その時、誰かに呼ばれたような気がした。  「少女の声…空耳か?」  結局、俺は駅を出て、何かに(いざな)われるかのように村の方へと歩き始めた。
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