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三流週刊誌の記者である平塚はある奇怪な猟奇殺人事件を追っていた。
ーー何者かに人が喰い殺される。
事件の始まりは真夏の観光地O県N市。
「焼物の町」として有名な観光地から少しばかり離れた、とある年季の入ったアパートの一室であった。
アパートの住人は30代の女性。
無残にも四肢は散らばり、かろうじて顔が認識できる程度であったという。胴体の腹腸は食い荒らされた形跡があり、臓器は跡形も無く、耳も喰われたのか、切り落とされていた。
前代未聞の猟奇殺人に日本中が震撼した。
その忌まわしい事件から数日、
再び「焼物の町」近郊で似たような猟奇殺人が発生。
人気のない運動公園の草むらに女性の体の一部が発見された。県警が公園を捜索した所、次々と四肢が見つかったが、これもまた臓器と耳が無かった。
更に怪奇な殺人は続き、運動公園での出来事から一週間後、今度は一軒家で発生した。
この件の被害者もまた女性で、同じく臓器が喰われていた。
これら三つの事件には共通した点が三つあった。
被害者は皆女性。
家族構成に兄が一人。
そして目撃情報。
ーー黒い服を着た女。
野次馬が囲む事件現場に必ず現れ、何やら口ずさみながらどこかへ歩いて行くという。
平塚のいる編集部には全国の都市伝説や怪事件と共にその女の目撃情報が相次いでいた。
様々な怪事件に姿を現す謎の女である。
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