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そろそろ日付も変わろうという頃、俺たちは席を立った。
もう一軒どっか行こう、そう誘う俺に香奈江は今日は飲み過ぎてもう無理だと言う。
それじゃ酔い醒ましで散歩でもしながら、という事で俺たちは夜道を歩く事にした。
通りの店はもうそろそろ閉店を待ち静まっている様子。
「ありがとう雅、今晩は凄く楽しかった!」
香奈江ではなく、俺には少しアルコールを入れておく理由があった。
「香奈江、この場所覚えてるか」
俺はそう言って、街中の大きな道路に面する歩道で立ち止まった。
「……うん、雅と初めて出会った所、だよね」
もう夜中というだけあって車は走っているが人も疎らだ。
「香奈江が言葉にすると終わっちまうから、気を付けて欲しい」
「え……?」
香奈江は何を言っているのか分からない、という表情で首を傾げる。
「時々、息苦しいっていうか、何かに引っ張られそうな時は無いか?」
「……何の事? 雅」
言いかけて口を閉じ、カラカラに乾いた喉に一旦唾を飲み込み俺はそれを口にする。
「一年前のここで、香奈江が車に轢かれてから」
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