恋人

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そして香奈江の頭に手を置いた。 「いいから。 ……分かるから」 「ごめんなさい……もし、私があの日あんな事をしなければ。雅を、巻き込んで」 「ただ俺の名前呼んでくれれば分かるから」 「……雅」 下を向いた香奈江から再びぱたぱたと透明な雫がこぼれ落ちる。 「うん」 「願いが叶って嬉しいのに……悲しいよ」 「うん」 「雅、……みや、び」 何度も俺の名を呼ぶ両頬に手を添え直して、涙でボロボロの香奈江の顔を見詰めた。 少しでもそれを止ませたくて瞼や濡れた頬、唇の端に雨みたいに口付けを降らせた。 香奈江が俺の首に腕を回し腰を抱いて再び引き合う。 「うん……俺も」 隙間が無い位触れたくて、するともっとと香奈江がキスを強請る。 「俺も。香奈江」 溢れ続ける涙を唇で丁寧に拾い、抱く力を弛めて香奈江を腕の中に入れた。 自分の我儘だと分かっていた。
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