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記憶
視界に真っ先に飛び込んできたのは白い無機質な天井だった。
白い蛍光灯がやけに眩しくて、それを遮るように手をかざした。
「──────」
ここは、何処だ?
「よお、ミヤビ、やっと起きたか」
「流石に心配したよ。こんな失態は仲間内で前代未聞だ」
「ミヤビさん!! 良かったあ、私、今日お店休んじゃいました」
「呑気なもんねえ、着地に失敗して頭打って入院とか」
まるで電器屋にあるいくつものテレビが別々のチャンネルで喋り出す様な、いきなり部屋中に響き渡る喧騒。
ここはパーティー会場かなにかか?
いや違う。そんなわけは無い。
「……止めてくれ、誰だか知らないが頭が痛いんだ」
上手く動かない体で非難がましい目だけをそちらに向けると、騒ぎがぴたりと止んで静かになった。
色んな色の髪や服装の、子供みたいのからそうじゃない男女の一行、それらが俺を凝視している。
「入院……病院か、ここは」
虚ろに呟くとその中でも一等長身で外国人風の男が前へ出、訝しげな表情で口を開いた。
「おい……ミヤビ?」
「誰だ? お前は」
「「「……………」」」
その馬鹿みたいにバラバラな見た目の一団が初めて協調性を発揮させて一様に目を丸くした。
「ミヤ──────」
「待て」
子供みたいな外見の女が口を開こうとすると最初に話しかけて来た長身の男がそれを制した。
何なんだ、一体。
「記憶が抜けちまってるらしいな。一過性のものだろう、ここは人間の対処に任せよう」
「で、でも………」
「あら、誰か来るみたいよ」
「お姫様の登場かな? ……ミヤビ、これだけは忘れるな。お前は任務中だ。終えたらさっさと戻って来い」
任務──────
意味が分からない前半の会話を無視してその言葉にズキリと頭が傷んだ。
指を沿わせると俺のそこには仰々しく包帯が巻かれているのに気付いた。
同時にこちらの方向に向かって廊下を走るバタバタという音が大きくなる。
………煩い。
頼むから、休ませてくれ。
固く目を閉じて彼らの声やその音をやり過ごそうとした。
「……っ、いい加減に」
「──────雅!!!」
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