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「香奈江、金曜だけど今晩用事は? 無かったらメシでも行くか?」
「無いよ! じゃ、LINEしてね」
俺より一足先に出社する香奈江が軽く俺にキスをして玄関に向かった。
閉まるドアの後に軽やかなヒールの音を聞きながら心無しかほっとする。
香奈江は結局あれから転職をした。
彼女は上司から今時酷いセクハラを受けていたのだ。
あらぬ噂もあって周りからも虐められていたと。
彼女に転職を薦めたのは俺だが、どうやら今回はうまくやっているらしい。
明日は香奈江の誕生日だ。
少し奮発してあいつの好きなパティ、何とかでも行ってみるかな、そんな事を考えていたら俺のスマホのバイブが鳴って震えた。
『今晩19時にお前の会社の近くにある○✕ビルの屋上で』
それだけのSNSのメッセージ。
見知らぬ番号だった。
「………ッ」
また頭痛か。
最近、益々頻度が増えている。
額に手をやりながら舌打ちしつつ、つい悪態をついた。
「──────いい加減にしてくれよ」
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