日常

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『19時半にいつもの場所で』 夕方香奈江に待ち合わせの為のメッセージを送った後、俺は場所へ向かった。 苛立ち、焦り、そんなものに混ざる、寂しさ、懐かしい、虚しさ、そして安らぎや喜び。 この頭の痛みに当てはまる、そんなつらつらと並ぶ長い形容詞の正体は一体何なんだ? 予感があった。 そこに答えを持っている奴が居る事を。 「何しに来た?」 もう陽が落ちる直前の、風が強いその場所に男が立っていた。 8階建ての古いビルの屋上だった。 「そんな問いをするって事はまだ微妙に思い出してないのか……なんてね」 長身、碧眼。 浅黒い肌といった目立った外観のその男は予想通り以前病室に居た男だった。 「こっちにはお見通しなんだけどね。ただ、上司としてはお前が心配なんだよ」 「上司? 何を言ってる」 そいつは肩を竦めて一歩こちらに踏み出し、俺は反射的に後ずさった。 その稀有な見た目のせいか、この男には不思議な圧迫感がある。 「お前があの間抜けな事故にあったのはこちらの責任でもあるし」 そうやってゆっくりと、一歩一歩距離を詰めてくる。 その度に鉛のような重苦しいものが胸につっかえた。 「……一体、誰なんだ?」 「その前に、思い出しなよ」 屋上の柵に追い詰められた俺に向かって微笑み。 「自分が何者なのかを」 ──────こちらに向かって、その長い腕を伸ばした時に俺の体がその柵を超えた
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