衣被(きぬかつぎ)

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田舎暮らしを始めて一週間。 都会の美大を卒業し、本格的に作家活動を考えていた矢先のこと。 地方に向かう芸術家募集というサイトを見つけて僕はここに移り住んだ。 田舎に集まった芸術家の卵たちが住むシェアハウス。 家賃は格安で週交代で周囲の稲や畑作を手伝ったりしながらの作家活動。 公民館や地元のギャラリーでの個展。 地元の美術館の協力もあるとの事で僕は期待に胸を膨らませていた。 しかし、蓋を開けてみれば田舎暮らしは思ったよりもキツい。 必要なものを買いに行くのに車が必須。 当番の畑仕事は重労働。 家が山の近くにあるため、こまめに掃除しないと部屋に虫が入ってくる。 あげくシェアハウスの半分以上の部屋が空いているため当番が早く来る。 慣れない農作業の連続で早くも体は痛く、手はマメだらけになった。
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