♥14.契約魔法のせいで

8/18

987人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
「ぼっちゃんあれ、迷子だろ。向こうからはお前のこと分からなくなってる。一緒に来たんだよな?」  種族柄、鼻が利くせいだろうか。それともここに来る途中、一方的にその姿を見かけたのか。ともあれ、ロイはリュシーに会う前から、ジークが近くにいることに気付いていたらしい。 「……」  沈黙が落ちると、風の音や葉音に混じって、微かな鈴の音が聞こえてくる。 「少なくとも、あれが聞こえてる間は大丈夫だろ」 「……言っときますけど、これ脅しですからね」 「脅しじゃねぇよ。お願いだろ」 「相手が断れないのを知ってて言うのは脅しと同じです」  先刻、霧の奥へと消えた影のことを思いながら、リュシーは淡々と答えた。 『要はふられたわけ』  そう自虐気味に笑ったロイは、持っていた瓶に蓋をして――くれたかと思うと、それをそのまま呼び出した配下の狼に預けてしまった。人質ならぬ物質(ものじち)だ。  ことが終わればすぐにでも返してくれると言ってはいたけれど、よく考えたらそれで「お前が気に入ってるから」なんてどの口が言うのか……。  *  *  * 「なぁ、これお前……今まで誰に抱かれた?」  一方の大きな手のひらが、半端に下衣を下ろした後ろへと触れてくる。リュシーは何も答えなかった。  答えなかったからと言って、ロイの手は止まらない。  一切待つことなく唾液に濡れた指にあわいを開かれ、間もなく探り当てた窪みを窺うように躙られる。それがゆっくり中へと潜り込み、更にその本数が増やされるまでに時間はそうかからなかった。  傍ら、ロイは再度訊ねた。 「なぁ。誰だよ、お前をこんなふうにしたの」 「………っ」  指をくわえ込まされたそこから、ぐちぐちとあられもない音がする。リュシーは軽く唇を噛んだ。  ロイの指はリュシーの身体が知っているものより随分太く、隘路は拒むように強く収縮する。そのくせ入口は柔軟に綻んで、誘うようにそれを受け入れようとするのだ。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

987人が本棚に入れています
本棚に追加