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「ぃ……っ、こ、答える義務は、ない、でしょ……」
「義務はねぇけど……知りてぇんだよ。誰がお前の身体をここまで躾けたのか……」
「躾……そんなの、今更知ってどうす――……っあ、や……! 俺はいい、俺はいいからっ……!」
やるならさっさと終わらせろ。特にあちこち触れなくていいし、服も脱がさなくていい。
そう先に言っておいたのに、ロイはその条件の一部を早々に反故にする。
襟はきっちりと詰められたまま、下も必要最低限に肌蹴られただけだったが、そうしてあらわになった〝前〟には手を這わせてきたのだ。
「触……っ、や、やめ……!」
リュシーは後ろ手に幹へと手をつき、自分の身体を支えていた。
そうしていなければ足元へと崩れ落ちてしまいそうで――。
けれども、ロイは一向に手を退かず、堪えかねたリュシーは片手でその腕を掴んだ。案の定、危うく傾き欠けた身体を、ロイが首筋を食むようにして支え直す。
「何で触っちゃだめなんだよ」
やり方はどうあれ、ロイはリュシーを気に入っていると言った。一緒に楽しもうと言った。
要はリュシーに触れたいのだ。本当ならもっと、耳元から首筋、胸、脇腹も足の付け根も全て、丁寧に愛撫したいと思っていた。
リュシーはぎゅっと目を閉じたまま、ロイの肩口に顔を伏せるようにして呟いた。
「……せないからだよ」
「え?」
問い返したロイの呼気が、リュシーの耳を掠める。
リュシーはぽつりと答えた。
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