♥16.呼ばれたから

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「ん……ぅっ……」 「もっと深くくわえ込め。お前から仕掛けてきたんだろう」 「ぐ……っ! んっ、んんぅ……っ」  両手首を戒められたまま、ジークはアンリの下腹部に舌を這わせていた。  言われた通りに大きく口を開き、反り返るそれを喉奥まで迎え入れようとするものの、気分と衝動だけではなかなか思うようにいかない。少しでも舌の根に触れると反射的に嘔吐(えず)いてしまい、どうしても途中で吐き出してしまうのだ。  それでも高揚感は消えなかった。そんなふうに言われても気持ちは沈まないし、それどころか、よけいに身体は熱を帯びて、いっそう喜ぶみたいに腰の奥が疼いてくる。張り詰めた自身からは早くもとろりと蜜がこぼれ、アンリの寝具にいくつもの染みを作っていた。 「は……、ぁっ……んんっ」  胸の前で祈るように揃えた手が、指が、アンリのそれへと再び触れる。  咳き込みながらも熱い口内にそれを飲み込んでいくと、溢れる唾液を塗りつけるようにしながら何とか頭を上下させた。苦しげに歪められた目元から止めどなく涙がこぼれても、ジークはしつこく食い下がる。  もしかしたら無意識にその先を見据えているのかもしれない。そうしなければ、本当に欲しいものは手に入らないと――。 「そのまま喉を締めろ」 「……っ! んうっ……――!」  堪えかねたように、アンリの手がジークの頭を押さえ込む。  そのまま髪を掴むようにして揺さぶられると、ほどなくしてちかちかと眼前に星が散った。息苦しさに勝手に喉が狭まり、そのつもりもなくアンリを締め付けてしまう。するとそれに呼応するように、ジークの下腹部もびくびくと震えた。 「ん、ぅ……っ!」  次の瞬間、喉の奥へと飛沫がかかる。頭をぐっと押さえられたまま、最奥を突くように残滓まで全て注ぎ込まれ――やがて引き抜かれるのに合わせて、ジークの喉がごくんと上下した。 「…………おいし」  ジークはあどけない仕草で唇を舐める。  そのくせいっそう強請るような眼差しで、艶然とアンリの顔を見上げた。  いつのまにか、ジークの熱も弾け、シーツの上はどろどろになっていた。
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