17.リュシーの独白

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 *  *  ……ったく、どいつもこいつも……頭の中ヤること(それ)しかないのかよ。  振り返ることもなくアンリの家へと戻る道中、リュシーは何度も溜息をついた。  アンリやジークは種族がら仕方ないとも思うのだ。ロイだって最悪、発情している時ならわからなくもない。(まぁ、それだってリュシーが相手をしなければならない理由にはならないが)  とはいえ、どのみちこんなふうに手近だというだけで狙われては堪らない。今更自分の貞操にこだわりはないけれど、そこまで気軽に使われる(いわ)れもないのだから。  そうぼやくように思いながらも、 「まぁ、これは助かったけど……」  手の中にある、たっぷりと蜜の入った小瓶を目にすると、うっかりまぁまたいつか機会があればな……なんて考えてしまったりもする。  ……だってまさか、あのジークがあれほどしっかり採集してくるとは思わなかったから。それもリュシーとは途中ではぐれているのに、その状況で向こうの方が多いなんてことになったら、やっぱり肩身が狭い。  ――そう、これはある意味借りだから。  *  *  *  ……いや、確かに仕方ないとは思ったけど。  思ったけど……。  明け方、まだ日も上がらないうちにアンリの寝室から呼び鈴が鳴った。  人型になって駆けつけてみたら、そこにはあられもない姿のジークが――。  扉を開けた時、アンリの姿は既に寝室の奥にある浴室へと消えていた。  もちろん何の説明もなしに……。  狭いながらも、お湯が出るシャワールームは他にもあった。普段のリュシーやジークは、裏の小川で水浴びすることも多かったが、天気が悪い日などはそこを使うこともあった。  ……とはいえ、この状態のジークをその狭い浴室に放り込むわけにはいかない。つまりこういう場合はリュシーが彼の世話をすることになるのだ。……初日のように。  ジークの身体を隅から隅まで丁寧に清めて、何事もなかったように服を着替えさせる。……そこには中の処理も含まれている。  そうして清潔なシーツの上に寝かせ、最後に風邪をひかないようちゃんと上掛けをかけてやる。そこまでが事後におけるリュシーの仕事だ。  当然、そこに断るという選択肢はなかった。
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