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淫魔のことはともかく、魔法使いとしてはカヤの方が血統が上だ。サシャよりアンリの方が上ではあるが、カヤは幻とも言われる純血種なため比べものにならない。
そのためアンリはカヤに一つの依頼をした。
カヤがいなければ自分がやるしかなかったが、使えるものがあるなら話は別だ。
その点に関してはわりと最初からそのつもりだった〝魔法使いとしての修練〟を、予定通り、アンリはカヤに丸投……託していた。
以来、週一ほどのペースでジークはカヤに魔法を習っている。
「本は読めてる?」
「あ、はい。もうすぐ3周目が終わるところです」
「ひと月でそこまでできたら上出来だよ」
ジークはカヤと共にアンリの家から2キロほど離れたところにある湖の畔に来ていた。
そこには切り株で作られたテーブルセットがあり、その上に数冊の本が広げられていた。それらは全て魔法使い特有の文字で書かれた書物だ。
アンリのメモ書きなどは初見でも何となく分かったジークだったが、それならとカヤに渡された本の方はまるでちんぷんかんぷんだった。
魔法使いとしての能力次第では、頭で理解するより先に血が解読してくれるらしいが(カヤは全て血による解読ができる)、ジークのベースではそれも日常レベルの言葉までが限界だったようで、
「じゃあ次は……その本とは別に、こっちを翻訳できるようになろうか」
「はい」
そのためジークは、まずはその基礎に当たる部分――いわゆる文字の読み書き――を地道に辞書などを使って覚えるところから始めていた。
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