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「多分、これくらい君ならすぐだよ」
ぱらぱらと開いて見せられた紙面には、一般的な人間の文字が書いてあった。それを魔法使い特有の言語に書き直すのが次回までの課題らしい。
〝ジークなら〟とカヤが言うだけあって、ジークは意外と筋は悪くない。並行して行っているコップの水を揺らす訓練も、程度はどうあれ、一週間ほどでできるようになっていた。
ちなみにカヤはお世辞にも人に教えるのが上手いとは言えない。
カヤがほぼ直感で全てを成り立たせてしまうからだ。
にもかかわらず、真面目に努力できる性分も手伝ってか、現時点でのジークの上達は平均より早い方だった。
「で……今日からは一応、こっちも」
言いながら、カヤが足元に置いていたものを拾い上げる。
ややして目の前に差し出されたのは、穂先が筆のような形をした一本の箒だった。
「箒……」
ジークは瞬き、開いていた本を閉じると残りの数冊と重ねて少し端に寄せた。
そして改めて箒に向き直る。
「ちょうど昨日できあがったって連絡があったから」
頼んでおいた職人から――。
箒は魔法使いの必需品なんだよ、とカヤは続けた。
そのわりに、ジークが知る限りカヤはいつも自転車(普通に地面を走ってくる)なので、そのせいかそこまでしっかりと結びついてはいなかったが、言われてみればアンリの家でも、アトリエの端に立てかけられているのを見たことはあった。
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