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「はい。ちょっと持ってみて」
「あ、はい……」
促され、ジークは両手でそれを掴んだ。
それは確かに、カヤやアンリが持っているのによく似た、柄の長さがジークの身長ほどの箒だった。
「あれ……」
「?」
「ごめん、もう少ししっかり持ってみて」
「? こう、ですか?」
ジークは言われるままに柄を握りしめた。
けれども、カヤは「あれー?」と再度首を傾げるだけだ。
「君ならすぐにでもいけると思ったんだけどなぁ……」
「いける?」
「あぁ、うん。柄にね、名前が浮き出るはずなんだ」
「名前」
「所有印って言うか、そういう……ほら」
カヤは不意に片手をくるりと動かした。
するとその手の中に、別の箒が現われる。
「わ!」
「あ、これは転移魔法。一応、ちょっと難しいやつ……」
実際はちょっとどころではない高難度の魔法なのだが、カヤは物心つく前から使っていたためその難しさがよく分かっていない。アンリも一応使える魔法ではあったものの、ジークはそれをまだ(正気の時に)目の当りにしたことはなかった。
「すごい……」
素直なジークの反応に、カヤはどこか照れたみたいに笑いながら、「まぁとりあえず、ここ見て」と持っていた箒の柄のある部分をジークの方に向けた。
示された柄の先に近い部分には、〝Kaya〟という文字が刻まれていた。
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