♥19.夢か現か

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「そういえば、淫魔(そっち)の血はアンリが見ているんだったね」 「あ、はい。診てもらっています……」  アンリはカヤのことは(態度はどうあれ)信頼しているようだったので、全て知られていても不思議はないと思っていた。むしろ知っていると思っていたからこそ、あんな切り出し方になってしまったも同然だった。  ジークが頷くと、カヤはカップを下ろして僅かに首を傾げた。 「っていうか、淫魔って……そもそもそんなに性欲旺盛なものなの?」 「え……」 「ごめん、俺、淫魔の知り合いって、アンリくらいしかいなくて」 「…………え?」 「え?」 「――――えっ……」  カヤとジークが、同時にぱちりと瞬いた。 「…………え、えっと」  束の間、妙な沈黙が流れた後、先に口を開いたのはジークだった。 「アンリ先生って……淫魔なんですか? 魔法使いじゃないんですか?」 「え……っ。う、うん……魔法使いであり、淫魔でもあるっていうか……?」 「そ…………そう、だったんだ……」 「そうだったんだって、君……もしかして、本当に――」 「初耳、です…………」 「え――――……」  カヤはハハ……と乾いた笑い声を漏らしながら、「ま、まぁだからって何が変わるわけでもないしね……?」と、一瞬リュシーに視線を投げる。その目はどこか助けを求めているようでもあったけれど、当然のようにリュシーはそれをスルーした。 (……まぁ、別に今更構わないとは思うけど……)  ただ、今後何かのネタにはされるかもしれないな。残念だけど……。  微妙に挙動不審になったカヤと、静かに呆然とするジークの背後で、リュシーは小さく肩を竦めた。  その時のことを思い返していたら、いつのまにか眠気が下りてきていた。そんな夢現のまどろみの中、ジークの頭をふと過ったのは、 (あれって……)  カヤから聞いたことを、アンリにはまだ直接確認はしていない。  けれども、本当にアンリが自分と同じ血を持っているのなら……。アンリも淫魔であるというのなら。  も全てそのせいだったということだろうか。  そう思うと、どこか腑に落ちる感じもした。
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