♥19.夢か現か

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 アンリが無言で目を細める。その眼差しを茫洋と受け止め、ジークはふるふると頭を振った。 「い、今のは……っ」  少なくとも、完全には()っていないと訴える。  下腹部を半端に戒めるような下着に助けられたのだ。もどかしく邪魔だと思っていたそれがなければ、簡単に達していたかもしれない。 「そうか」 「ゃ、待……っ!」  するとそれを読んだかのように、アンリは試すみたいに最奥を穿った。敏感な内壁を一気にめくりあげ、行き止まればその場所を執拗に躙る。 「あぁっ、だめ、も、い……っ」  ジークの声が甘く掠れる。シーツを掴む手にいっそう力が入り、目の前が白く瞬いた。  かと思うとぱたぱたとジーク(自分)の顔に雫が降ってくる。遅れて伝い落ちてきたそれが、唇を濡らす。下着から覗いていた先端が、いつのまにか更に露出していた。 「ぁ……あ……」  そんなあられもない格好のまま、ジークは浸るように目を閉じる。余韻に小さく震えながら、弛緩する身体を心地良い気怠さが包み込んでいた。  けれどもそれも束の間で、幾度か緩慢に瞬くうちには、すぐさま身体の奥が疼いてきて、 「あ、ち、違……っ」  同時にジークははっとしたように声を上げた。 「何が違う」  責めるように言われて、言いつけを破る(そんなつもり)はなかったと首を振る。  なのにそうしている間にも、内壁は戯れるようにアンリを締め付け、強請(ねだ)るようにきゅんきゅんと収斂するのだ。だってまだ本当に欲しいものは貰えていないから――。  アンリは呆れたように目を眇めた。 「や……ぁ、やめな、で……っ」  ジークが縋り付くような声を漏らす。  アンリは何も応えず、ただ身体を繋げたまま、サイドテーブルの上にある小瓶に手を伸ばした。 「んんっ……!」  たったそれだけの動きにも、ジークの屹立から蜜がこぼれる。まるで先刻の残滓が押し出されるように。
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