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アンリが無言で目を細める。その眼差しを茫洋と受け止め、ジークはふるふると頭を振った。
「い、今のは……っ」
少なくとも、完全には達っていないと訴える。
下腹部を半端に戒めるような下着に助けられたのだ。もどかしく邪魔だと思っていたそれがなければ、簡単に達していたかもしれない。
「そうか」
「ゃ、待……っ!」
するとそれを読んだかのように、アンリは試すみたいに最奥を穿った。敏感な内壁を一気にめくりあげ、行き止まればその場所を執拗に躙る。
「あぁっ、だめ、も、い……っ」
ジークの声が甘く掠れる。シーツを掴む手にいっそう力が入り、目の前が白く瞬いた。
かと思うとぱたぱたとジークの顔に雫が降ってくる。遅れて伝い落ちてきたそれが、唇を濡らす。下着から覗いていた先端が、いつのまにか更に露出していた。
「ぁ……あ……」
そんなあられもない格好のまま、ジークは浸るように目を閉じる。余韻に小さく震えながら、弛緩する身体を心地良い気怠さが包み込んでいた。
けれどもそれも束の間で、幾度か緩慢に瞬くうちには、すぐさま身体の奥が疼いてきて、
「あ、ち、違……っ」
同時にジークははっとしたように声を上げた。
「何が違う」
責めるように言われて、言いつけを破るはなかったと首を振る。
なのにそうしている間にも、内壁は戯れるようにアンリを締め付け、強請るようにきゅんきゅんと収斂するのだ。だってまだ本当に欲しいものは貰えていないから――。
アンリは呆れたように目を眇めた。
「や……ぁ、やめな、で……っ」
ジークが縋り付くような声を漏らす。
アンリは何も応えず、ただ身体を繋げたまま、サイドテーブルの上にある小瓶に手を伸ばした。
「んんっ……!」
たったそれだけの動きにも、ジークの屹立から蜜がこぼれる。まるで先刻の残滓が押し出されるように。
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