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「…………えっ……」
アンリの唇にジークの吐息がかかる。
ジークは瞬き、近すぎる距離にあるアンリの顔を認識すると、
「えっ……えぇ!?」
とびすさるような勢いで上体を後ろに退いた。もちろん、そのままアンリの傍から離れるつもりで。
「あ、っえ、ん……っ!?」
けれども、中途半端とはいえすでにアンリと繋がっている身体がそれを許さない。骨が軋むほど背を反らしても、それ以上の距離はとれなかった。
しかもアンリの片手はジークの腰に添えられたままなのだ。当然のように、その力が緩められることもない。
「えぇっ……な、なん……っ」
ジークは激しく動揺した。
現状に頭がついていかない。それでもいま、自分の身体がどうなっているのかだけはほどなくして理解する。
気がつけば下着一枚身につけていない。一糸まとわぬ裸体を惜しげもなく晒している。晒しているどころか、嫌がるふうもなく足を開き、アンリの上に跨がって、更には自分のそこに、彼のそれが……。
「ええぇええっ、えああぁっ、ええぇえ……!!」
たちまちボン、と音がしそうなほど顔が真っ赤になる。
アンリの期待した薬効が出たのだろう。ジークは完全に正気を取り戻したようだった。
とたんに動転し、身動げばうっかり接合部から水音がして、妙な震え声を漏らすその姿にアンリは密やかに口端を引き上げる。
「どうした。早く腰を落とせ」
アンリは何食わぬ顔して先を促す。あくまでも平然と、腰を捕らえている手にじわじわと力を込めつつ、仰け反ってさらされた眼前の喉元に唇を寄せる。
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