♥19.夢か現か

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 隘路を埋めるアンリの熱。継続的に弾むスプリング。なのにアンリの手はジークのどこにも触れていない。身体を揺することすらしていない。  腰を動かしているのはジーク(自分)だけだった。控えめながらも接合部を擦りつけるようにしながら、胎内(なか)のいいところを自ら押し当てようと身体を揺さぶっている。止まらない。  信じたくはないけれど、それが現実だった。 「あ、ぁ、違……っ違うのに、身体が、勝手に……っ」  違うのに。  やめたいのに。  離れたいのにそれができない。  違うといいながらアンリにしがみつく。  やめろと言いつつアンリのそれを締めつける。  離れたいのに離れたくない。 「欲しいということだろう。もっと、私が」  ツンと隆起した胸の突起が、アンリの肌蹴たガウンや胸板に弾かれる。  そのたびビリビリとした甘い痺れが走り、背筋が仰け反りそうになる。 「……違、そんなことっ……」 「言っておくが、私はお前に触れてないのだからな」 (わ、わかってる……それは、わかってる……けどっ……)  こんなことなら、何も考えられなくなる方がましだ。  羞恥心ばかりが先に立って、顔もあげられないのに、 (……欲しい……胎内(なか)に、アンリさんの、が……)  身体は言われた通りに欲しがっている。見るからに望んで、善がって、浅ましく先を強請(ねだ)っていた。 「――いいだろう」  アンリは笑うように目を細め、小さく口端を引き上げた。  ()ちそうで堕ちないその様は悪くない。  どころか、自身もヒート中だからか、思いのほか興が乗る。 「えっ……あ、わ!」  アンリは不意にジークの身体を背後に突き倒すと、仰向けに転がったジークの脇腹に手を添えた。アンリの腰を挟んで投げ出すような格好になった下肢ごと、僅かに浮いた下半身は繋がったままだ。  アンリは無言で手に力を込めると、息を呑み、僅かに目を瞠るジークの腰を引き上げるようにしながら改めて繋がりを深くした。
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