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隘路を埋めるアンリの熱。継続的に弾むスプリング。なのにアンリの手はジークのどこにも触れていない。身体を揺することすらしていない。
腰を動かしているのはジークだけだった。控えめながらも接合部を擦りつけるようにしながら、胎内のいいところを自ら押し当てようと身体を揺さぶっている。止まらない。
信じたくはないけれど、それが現実だった。
「あ、ぁ、違……っ違うのに、身体が、勝手に……っ」
違うのに。
やめたいのに。
離れたいのにそれができない。
違うといいながらアンリにしがみつく。
やめろと言いつつアンリのそれを締めつける。
離れたいのに離れたくない。
「欲しいということだろう。もっと、私が」
ツンと隆起した胸の突起が、アンリの肌蹴たガウンや胸板に弾かれる。
そのたびビリビリとした甘い痺れが走り、背筋が仰け反りそうになる。
「……違、そんなことっ……」
「言っておくが、私はお前に触れてないのだからな」
(わ、わかってる……それは、わかってる……けどっ……)
こんなことなら、何も考えられなくなる方がましだ。
羞恥心ばかりが先に立って、顔もあげられないのに、
(……欲しい……胎内に、アンリさんの、が……)
身体は言われた通りに欲しがっている。見るからに望んで、善がって、浅ましく先を強請っていた。
「――いいだろう」
アンリは笑うように目を細め、小さく口端を引き上げた。
堕ちそうで堕ちないその様は悪くない。
どころか、自身もヒート中だからか、思いのほか興が乗る。
「えっ……あ、わ!」
アンリは不意にジークの身体を背後に突き倒すと、仰向けに転がったジークの脇腹に手を添えた。アンリの腰を挟んで投げ出すような格好になった下肢ごと、僅かに浮いた下半身は繋がったままだ。
アンリは無言で手に力を込めると、息を呑み、僅かに目を瞠るジークの腰を引き上げるようにしながら改めて繋がりを深くした。
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