♥19.夢か現か

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「ぃ――あぁっ、なんで……!」  突然堰き止められた苦しさに、ひくんと屹立が跳ねる。先へと溜まっていた雫が小さく飛び散る。  引き攣ったように腰が震えて、見開かれた目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。 (なんで、こんな……っ)  (たま)らず勝手に手が伸びる。両方の指が切羽詰まったようにリボンを探る。  すぐにでも取りたい。解きたい。  だってもう少しで届きそうだった。自制することをやめれば、今にも()けるところだったのに。 「あ……ぁ、ぇっ……」  なのにリボンはなかなか緩まない。  端を正確に引っ張れている自信はないけれど、それでも普通のリボン結びならばそろそろ綻ぶはずだ。それなのにその結び目は――どころか、リボンの形自体一向に崩れない。 「何をしている」 「あ……やっ」  なおも必死にリボンに触れるジークの腕を、呆れたようにアンリが掴む。下腹部から引き剥がし、両腕をそれぞれ捕らえて拘束する。 「無駄なことはやめておけ」  潤んで、蕩けて、(まなじり)を赤く染めた双眸が、信じ難いようにアンリを見上げる。  そのリボンには魔法が作用しているのだと、そこでようやく理解した。 「大丈夫だ。お前は別に出さずとも――」 「……え……?」  どこか揶揄するように言われた言葉に、ジークの動きが一瞬止まる。  その隙を突くように、アンリは何も言わずに掴んでいた腕を一気に引いた。
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