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「ぃ――あぁっ、なんで……!」
突然堰き止められた苦しさに、ひくんと屹立が跳ねる。先へと溜まっていた雫が小さく飛び散る。
引き攣ったように腰が震えて、見開かれた目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
(なんで、こんな……っ)
堪らず勝手に手が伸びる。両方の指が切羽詰まったようにリボンを探る。
すぐにでも取りたい。解きたい。
だってもう少しで届きそうだった。自制することをやめれば、今にも達けるところだったのに。
「あ……ぁ、ぇっ……」
なのにリボンはなかなか緩まない。
端を正確に引っ張れている自信はないけれど、それでも普通のリボン結びならばそろそろ綻ぶはずだ。それなのにその結び目は――どころか、リボンの形自体一向に崩れない。
「何をしている」
「あ……やっ」
なおも必死にリボンに触れるジークの腕を、呆れたようにアンリが掴む。下腹部から引き剥がし、両腕をそれぞれ捕らえて拘束する。
「無駄なことはやめておけ」
潤んで、蕩けて、眦を赤く染めた双眸が、信じ難いようにアンリを見上げる。
そのリボンには魔法が作用しているのだと、そこでようやく理解した。
「大丈夫だ。お前は別に出さずとも――」
「……え……?」
どこか揶揄するように言われた言葉に、ジークの動きが一瞬止まる。
その隙を突くように、アンリは何も言わずに掴んでいた腕を一気に引いた。
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